祝 自立生活スタート!!

2022年11月1日から念願の自立生活をスタートさせた筋ジストロフィーの「ゆきさん」。約3ヶ月経った今、率直な思いを聞いてみました。   ゆ:きさん 仁:鈴木仁美 大:三浦大輔

仁:自立して約3ヶ月経った感想は?

ゆ:「自立生活って、大変だけど、楽しい!」です。擬音語で言うと、「バタバタ、キラキラ!」ですね!

 引っ越し当初は、夢が叶ったことが信じられなくて…「夢なんじゃないか?」と何回も疑問に思いましたが、今は夢が叶ったと言う、確かな嬉しさでいっぱいです。自分には無理だと思っていたことが出来た、と自信につながりました。

 自分で生活をまわせるようになり、生きているんだ、という実感を踏みしめています。毎日が新しくて、毎朝が、初日の出みたいです。朝、カーテンを開いて、晴れてると拍手やピースしちゃいます!

 自立して、本当に良かったです!

仁:自立生活が始まって楽しいことはなんですか?

ゆ:うーん、逆に難しいですね。全部、一つ一つが楽しいです。生きてることが、楽しいです!

 白いカーテンに、木漏れ日の光がキラキラ映ること。洗濯機をまわす音。青空に洗濯物を干すこと。レンジが飲み物を温め終わった音を鳴らしてくれること。呼吸器が呼吸してくれること。

 これでは、答えにならないので、頑張って答えます(笑)

 家具、家電、生活用品を選ぶことや配置やインテリアを考えること。ネットショップやルームクリップを見て、どんな家具を買って、どこに置こうかなと考えたり、それがだんだん形になってきてることです。

 スーパーに行ったら、コンビニよりパラダイスだったこと。

 パンを焼いて食べたくて、トースターないので、魚焼きグリルで試行錯誤してること。

 髪を染めたこと。チューリップを球根から育ててること。

 自分の台所でホットケーキを焼いて、クリスマスに友達と食べたこと。とか、でしょうか?

仁:逆に自立生活が始まって大変なことはなんですか?

ゆ:何もしなくても、夕食が出てきた自立前とは違い、慣れてないからもあるけど、家事に忙しいことですかね。1日があっという間です。

 台所に、ガスコンロを設置したので、徐々に自炊できています。一人だし少食なので、食材を余らせないように、また、用意した食事を残さないように、試行錯誤です。

 以前、「自立生活=自炊生活」だと思うくらい、自炊は重要だと感じてました。でも、いまは、自立=自炊ではなくて、買い物、在庫管理、調理指示、ごみ出しなど、24時間介助者を入れながらどう生活をまわす、めぐらせるかが、自立生活の要だと感じています。

 一家の主となり、掃除は、管理する場所が増えて、大変です。でも、「あっ、ガスコンロはどうやってお手入れしたら!?」、「なるほど、トイレ掃除はこうやるのね!」、とか調べたり学んだりするのが楽しいです。掃除に限らず、今まで見えてなかった、分からなかった、やったことなかったことをやるのは、大変でも、新しいことを知るのは全体像が見えて、楽しいです!例えて言うなら、「お刺身のマグロ」しか知らなかった自分が、太平洋に泳いでるマグロを見て、「うおー、マグロってこんなだったんだー!」と思うような感じです☆

大変さについての質問でしたが、大変さも楽しさのひとつです。

大:最近料理して一番うまくいったのはなんですか?

ゆ;ホワイトシチューです。雪の日の朝作りました。材料を買ってなかったけど、カレーの材料の残りで出来ました。何回かに分けて食べて最後はチーズを乗せてレンジでチンしてドリアにして食べました。

仁:髪を染めたきっかけを教えてください。

ゆ:もともと10年くらい前から髪を赤やピンクにしたいと思ってたんですが、自立して、今までやりたかったけど出来なかったことを、やろう!と思い実行しちゃいました!

仁:美容院ではどうやって施術したんですか?

ゆ:お姫様抱っこ出来るヘルパーさんにシャンプー台へ移乗してもらいました。でもこれは私の失敗で、ヘルパーさんに負担が大きかったから、お店の男性スタッフさんの手を借りたりして次回は配慮したい。

仁:失敗しながらも学んで次にいかしてるんですね。

ゆ:ヒヤリや失敗、いっぱいです(笑)

仁:この家に決めた理由はなんですか?

ゆ:内見に行ったとき、玄関のドアを開いたら、床が白くて、陽当たりが良くて、「あぁ明るくて良いな…。」と感じたことです。難しいことは考えず、最後はインスピレーションで即決しました。玄関からリビングにまっすぐに車椅子で入れるのも良かったポイントです。例えば、「台所は絶対に壁かけ式が良い」とか、事前に決めてた条件はありましたが、細かいことを挙げてたらキリがないので、最後は、ときめき(笑)と勢いだと思いました。

大:家探してて苦労したとは何ですか?

呼吸器の音が壁になってなかなか内見ができなかった事です。

仁:いろはと関わったきっかけ覚えてますか?

ゆ:もちろん、覚えてます。2009年に、水戸駅に行ったとき、偶然、大輔君をお見かけしました。そのとき、大輔君は、電動車椅子の男性と一緒にいました。絶対にこの出逢いを逃してはいけない「このかたとお話したい!」と感じました。大輔君とわたしは同じ病気の仲間だったので、大輔君にメールで「きょう、大輔君と一緒にいたかたを紹介してもらえませんか?」とお願いしました。それで、連絡先を教えていただき、そこに「いろは」「稲田」と名前がありました。そこからすぐ、いなださん達が初めて自宅訪問してくださいました。「一人暮らしをしたいんです。」とお話しました。会員になり、関わりが始まりました。13年前のことなので、ずいぶんと、時間がかかりました…。

仁:自立生活する前と今で気持ちの変化はありますか?

ゆ:あり、あり、です!

自立前より、気持ちが前向きになりました。自立前は、強い不安から、鬱状態になってしまい、心療内科をネットで検索したりしてました。ここ数年は、心が苦しくて、涙を流すことが多かったですが、泣かなくなりました。自立前は心が疲れてしまって、「もう、十分、頑張ったよね?、もう頑張らないで、もうわたしは生きないで良いのかな。」と暗いほうへ揺れてましたが、今は「もっと、生きたい!」と思うようになりました。

ずっと、今後の生活が不安でした。「生きること」も「死ぬこと」も、両方が、怖かった。これからも生きて良いのか、生きていけるのか、自問自答していました。わたしは、これからも生きていい、わたしは生きる、そう思います。自立して、「安心」したんだと思います。

引っ越ししたそこは、とても、「明るい昼間のような空間」だったから、もう暗い夜空の中で、小さな星明かりを必死に探さなくて良いんだと思いました。

主語が他の誰でもなく「わたしは」「わたしが」と自分になりました。

仁:自立生活する前と今で生活が変わった部分はありますか?

ゆ:すっかり、早寝早起きになりました!自立前は、寝付きが悪く、不眠症気味でした。午前2時位にやっと眠り、朝は9時位にやっと起きてました。寝る前は、暗闇の中で将来のこととか考えたり、不安が強くなり、寝付けませんでした。わずかに残る右手の筋力で、時には自分を叩いてしまいました。

 外出も多くなりました。

仁:これからやってみたいことはありますか?

ゆ:遠出や旅行してみたいです!まずは、日帰りで電車で、日立駅の海の見えるカフェに行ってみたいなぁ。

 飲み会を主催したいです。でも、もはや、早寝すぎて、出来ないかもね(笑)

 あと、わたしは、絵描きなんですが、コロナ禍になってから、個展をしていないので、また個展をしたいです!

自立生活は夢でしたが、それはゴールでなくて。わたしの夢は「ずっと絵を描くこと」で、自立は夢を叶えるための夢でもありました。だから、やってみたいことは、これからも、生涯、絵を描き続けたいです。絵を通して、誰かにひかりを届けること、そうして社会と関わり続けることが人生をかけて、やりたいです。

仁:これから自立生活を目指す人に一言お願いします

ゆ:それぞれ、色々な壁があると思います。地方に住んでいる、医療依存度が高い、入院している病院から出たいけど医師から反対されている、家族の許可がでない、等もあると思います。

 自立生活は、本人の強い意思があれば、必ず、出来ます。必ず支えくれる人がいます。でも、自分自身の意思が無ければ、支援する周りも何も動けません。やればできる。やらなければできない。

 わたしは、言い訳することが好きで、出来ない理由や、やらない理由を並べて、動かない自分を許す材料にしていました。

 でも、わたしたちの命の時間は有限です。やりたいことがあるなら、誰かや何かを理由にしないで、やってみませんか。だって、一度きりの自分の人生じゃないですか。あなたの好きなように生きてほしいです。

 「人生に無駄な時間はない。」と、よく一般的に言われる言葉ですが、わたしのように、出来ない理由を並べて、あなたの命の時間を無駄にしてほしくないです。やらないままなら、永遠に出来ないままです。

 「料理の仕方が勉強不足で、まだ勉強してから…。」とか、色々あると思います。旅支度は100%じゃなくて良いんです。大事な技術や心得、物ものだけ、リュックに入れて、あとからでも何とかなるものはあとからゆっくりで良いから、列車に乗って、新しい光景を見に行きましょう☆

大:きさんが答えてくれた言葉は、これから自立生活を目標にしている人にすごく励みになると思います。

投稿者プロフィール

CILいろは(茨城県)
CILいろは(茨城県)
「CILいろは」は、障害者が地域の中で自分らしく暮らしていくための自立支援活動を、障害当事者が中心となって障害者の立場にたった支援を行っていく団体です。