朝日新聞 2018年3月18日03時00分

石川)共に暮らし、語りたい 筋ジス患者・古込さん講演  定塚遼

横になった状態で用意した紙を読み上げる古込和宏さん=金沢市尾山町

重度障害者の病院や施設外での暮らしを考えるシンポジウム「共生社会実現のヒントとは」が17日、金沢市尾山町の金沢商工会議所で始まった。昨秋から自立生活をおくる筋ジストロフィー患者の古込和宏さん(45)が講演やパネルディスカッションに参加。「これから色々な人に会って話したり、色々な風景を見たりして視野を広げたい」と語った。
130人の参加者を前に登壇した古込さんは用意した文章を途中まで読み、その後はヘルパーが代読。専門家らとのパネルディスカッションでは自ら受け答えした。
輪島市出身の古込さんは5歳のころ筋ジストロフィーと診断を受けた。8歳で家族と離れて金沢市の病院に入院。以来37年間、病院で暮らしてきた。講演では「病院にいながらも、心の目はいつも外を向いていたが、そこから一度も自分の将来の姿が見えたことがなかった。高等部卒業後の人生はとても長く感じた」と振り返った。
病院を出たくても、「家に帰りたい」と言えば家族の生活が立ち行かなくなるのは分かっていた。「絶対に言葉にしてはいけないと思っていました」
その後、インターネットなどで情報を集め、協力者を得て病院外での生活を実現させた。パネルディスカッションで退院までに大変だったことを問われると、「看護師を自分で確保しなければならず大変だった。社会の皆さんに、外に出たくても出られない私みたいな人がいることを知ってもらうことが大事」と話した。
基調講演では金沢大の井上英夫名誉教授が「施設や家に閉じ込めれば犯罪にもあわないし安全。だが、そうしたことが障害者の選択肢を狭め、自己決定する機会や力をつける機会を奪ってきた」と話した。
18日は金沢市石引4丁目の本多の森会議室で、弁護士が障害者の権利擁護をめぐる事例について報告する。無料、申し込み不要。手話通訳、要約筆記あり。(定塚遼)

 

 

中日新聞 石川
2018年3月18日
筋ジスの古込さん「地域と生きたい」 金沢でシンポに登壇

パネルディスカッションで発言する古込和宏さん(左)=金沢市尾山町の金沢商工会議所で

全身の筋肉が徐々に衰える筋ジストロフィーを患い、昨年十月に三十七年間の入院生活から一人暮らしを始めた金沢市の古込(ふるこみ)和宏さん(45)が十七日、同市尾山町の金沢商工会議所であったシンポジウムに登壇し「これからも支えてくれるヘルパーや看護師、地域の皆さんと生きていきたい」と語った。
古込さんは、生い立ちから退院までの経過や思いをつづったA4用紙六枚に及ぶ手記をゆっくりと読み上げた。一ページの半分ほど読み上げた後、ヘルパーが代読した。
退院までの大きな壁となったこととして、古込さんは病状を心配する両親の反対と医療面でのサポートだったと振り返り、「人のつながりが生まれ、さまざまな助言や協力があって地域移行ができた」と述べた。
古込さんの退院を支えた筋萎縮性側索硬化症(ALS)の母親の介護記録「逝かない身体」の著者川口有美子さん、金沢税務法律事務所の宮本研太弁護士らとのパネルディスカッションもあった。自立を反対する家族との葛藤について問われると、古込さんは「もう成人しているので両親の同意は不要だと思った。自立したいと思う人は自分で主張してほしい」と語り、「一度は両親と絶縁状態になったが、どれだけ時間がかかっても両親と向き合っていきたい」と述べた。
宮本弁護士は「県内に前例がなく、古込さんを支えるヘルパーの確保が難しかった」と明かした。
シンポジウムは「障害と人権全国弁護士ネット」が主催した。 (蓮野亜耶)

 

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