厚労省で報酬改定検討チームが開催され、2021年4月からの報酬改定の内容が了承されました

資料全体

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16541.html

 

重度訪問介護でヘルパー運転可能に(4月からの制度改正で)

重度訪問介護については、去年から要望していた、ヘルパーが障害者の車等を運転中に停車して介護を緊急で行う場合の1日2400円の加算ができることが確定しました。

従来は、障害者の車をヘルパーが運転する場合、運転時間は重度訪問介護の制度が使えなかったため、障害者が自費で人件費を支払う必要がありました。今回の加算ができたことで、短時間の運転ならば、この自己負担がなくなる事業所がほとんどになるでしょう。

重度訪問介護の「移動加算」と今回の加算「移動介護緊急時支援加算」を加えると、車に往復1時半から2時間ぐらい乗って買い物に行くくらいであれば、(運転途中で停車して介護を行っていれば)、家にずっといる場合の重度訪問介護の介護報酬と同じ位の報酬になるため、全国のどこの事業所でも、1日1時間半から2時間位までの短時間の車を使った運転つきの外出を利用者の(制度外の)自己負担なしで実施できるようになるでしょう。(車は障害者が用意することが必須)

重度訪問介護(区分6・日中)で

8時間自宅でサービスを利用した場合

事業所収入1万5320円(8時間未満単価)

重度訪問介護(区分6・日中)で

家に4時間+運転往復2時間(途中で停車し5分介護)+車から降りて外出2時 間 の合計8時間の場合

本体11470円(6:05なので6時間30分未満単価)+移動介護緊急時支援加算2400 円+移動加算1500円

= 1万5370円

重度訪問介護(区分6・日中)で

家に2時間+運転往復2時間30分(途中で停車し5分介護)+車から降りて外出 3時間30分 の合計8時間の場合

本体10550円(5:35=6h未満単価)+移動介護緊急時支援加算2400円+移動加算 2500円

= 1万5450円

 

なお、ヘルパーの車やヘルパー事業所の車だと白タクになるので利用できません。

障害者が持っている車や、障害者自身が借りた車など、道路運送法に違反しない車に限定の話です。これ通知等で記載するそうです。

 

厚労省報酬改定検討チーム資料

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000733748.pdf

23p抜粋

 

(2)重度訪問介護

1 運転中における駐停車時の緊急支援の評価

・ ヘルパーは障害者に対して適時適切に必要な支援を行わなければならないことから、ヘルパーが運転する自動車で障害者を移送する際に、利用者の求めや体調の変化等に応じて駐停車をして、喀痰吸引などの医療的ケアや体位調整等の支援を緊急的に行った場合、その緊急性や安全管理等を評価する。

≪移動介護緊急時支援加算【新設】≫ 240単位/日

※ 利用者を自らの運転する車両に乗車させて走行させる場合であって、外出時における移動中の介護を行う一環として、当該利用者からの要請等に基づき、当該車両を駐停車して、喀痰吸引、体位交換その他の必要な支援を緊急に行った場合にあっては、利用者1人に対し、1日につき所定単位数を加算する。

なお、障害者が用意した車であれば、ヘルパー運転でも白タクにならない解説については下記の過去記事を参照ください

(ヘルパーの車やヘルパー事業所の車だと白タクになりますので、今回の制度は使えません)

 

国土交通省の道路運送法との関係についての2005年の解説記事

http://www.kaigoseido.net/topics/05docu/dorouneihou.htm

その後出た国土交通省の事務連絡

http://www.kaigoseido.net/topics/05docu/dorouneihou.pdf

 

 

運動の経緯の解説

海外では北欧のパーソナルヘルパーなどが24時間の介護サービスの中で運転も行なっており、運転中は介護サービス対象外になるのは日本独自の事情でした。(そもそも、障害者が車でも、学校でも、職場でも、パーソナルヘルパー制度が使えます)

日本でも、1999年までは明確に運転が介護の対象外というルールはなく、当時はガイドヘルパーで運転を認めている地方都市もありました。中には貸し出し用のリフトカーを市が用意した地域もあります。

ところが、2000年に介護保険が始まると、身体介護で通院が認められ、タクシー会社が運転手に2級資格を取らせ、身体介護(1時間4000円)を使って老人を運賃無料で通院させるということが起きました。この利用者には歩けるくらいの軽度の老人も多かったため問題になりました。この結果、厚労省老健局は運転中は介護を行ってないので介護サービスの対象でないことを決め通知します。

これ以降、障害福祉の外出サービスでも、整合性を取るために、運転中は介護サービスの対象外となってしまいました。このため、それ以降、全身性障害者は、自腹で運転中の給与をヘルパーに払って車移動するしかなくなりました。24時間介護サービス利用者が運転中だけ制度が使えないということになったのです。地方では、健常者は大人になると誰もが運転免許をとって生活しています。店舗も、公共の施設なども、職場も、車でアクセスする前提で社会が作られています。健常者ならば、車に乗って出かけるのは普通ですが、障害者の場合はヘルパーに時給を払って移動していました。

しかし、近年批准した障害者の権利条約では、障害者に対して、健常者と同様の生活ができるような施策を行うことが国に求められています。特に地方で全身性障害者が車で移動が可能になるヘルパー制度改正が長年求められていました。

厚労省の障害福祉課では長年、障害者団体からの要望を受け、検討をしてきましたが、運転中は介護していないとする2000年にできたルールが壁になって解決しませんでした。そんな中、運転中に停車して吸引や体位交換や排泄介助などを行っているその短時間を評価する加算を設けるアイディア案が出ました。その際、介護保険の身体介護と同じ単価の通院等介護など他の移動介護制度は単価が高いため、それらまで同じような加算をつけるわけには行かないため、障害者団体と相談しつつ単価の低い重度訪問介護と単価の高い通院等介護などの単価の差の範囲内で、重度訪問介護に加算する前提で、制度案ができあがりました。

(通院等介護(身体介護を伴う)や同行援護や行動援護などは1時間4000円程度と高い単価のため、障害者の車をヘルパーが運転中は無料でサービスをしても、ヘルパーの人件費をまかなえます。サービスの5割程度を運転に当てても、重度訪問に比べて高い単価です。このため、まずは重度訪問介護のみの加算として、今回の制度が出来上がりました)

 

ヘルパーに運転してもらうには障害者側で準備を

ヘルパーに運転をしてもらうことが初めての障害者も今後増えると思われますが、運転は間違えれば事故を起こし、被害者が亡くなると裁判で莫大なお金を支払う必要が出ます。運転を頼む前に、障害者側でしっかりと勉強が必要です。

例えば、目的地までどのような道を通るか、危険な道はないか、いつでも路肩に停車をできる広い道か、普通は何分でつくか、渋滞時はどうか、安全に行くには何時に出発準備を初めて何時に出るのか、こういったことを障害者自身がネットを見て調べて置くことです。つねに30分以上の余裕を持ってつくようにする、遅れても急がさせないなど、急いで事故を起こさないようにする責任があります。ヘルパーの運転の能力も把握が必要です。障害者の車を運転するので、なれてない車のため、安全な道路で練習も必要です。任意保険は、家族以外の運転ができるように変更が必要です。事故時は、運転手の責任ではなく運転を命じた障害者自身の責任です。相手方にお詫び等が必要です。CIL等では、講座の自立生活プログラムの中でこれらを障害者が学んだ上で無いとヘルパー運転を利用できない障害者団体もあります。