全国介護保障協議会では、制度の解説・情報等をHPに掲載しています。
当会HPより2016年1~7月の情報を転載致します。

総合支援法の改正法が成立(2018年後施行)
重度訪問介護の入院時の病室での利用や、65歳になる障害者の介護保険自己負担分の無料化など2018年に開始

昨年12月の社保審報告書で取りまとめられた内容が、国会で5月末に採決され、法案成立となりました。2018年4月1日に施行されます。次頁から主な内容を厚労省作成資料で紹介し、詳細についての最新情報解説を加えます。
(前号 http://www.kaigoseido.net/kaihoo/15/201507-12.pdf の解説もご参照下さい)

6月30日の厚労省社会保障審議会障害者部会(第80回)資料より(次ページ以降も)
全文は http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000128839.html



解説
(前号の解説も参照)
前号で「主に軽度の知的障害者・精神障害者むけよろず相談」と紹介しました。この新制度の名称が「自立生活援助」になりました。共同生活援助(グループホーム)の「共同」が「自立」にかわったというネーミング。

イメージとしては、今、グループホームの世話人がやっているような事を、1人ぐらしの軽度障害者の自宅を定期的に(週1~2回など)巡回したり、随時対応したりして、アパートなどに1人で暮らしていても、グループホームで暮らしているのと同じような支援が受けられるという制度です。介護は行いません(介護が必要なら別にヘルパー制度を(各障害者が市町村に申請して)別のヘルパー事業所と契約し、利用できます)。

グループホームのサテライトとは違い、障害者がいるのは自宅(アパート等)なので、居住地特例(入所前市町村が費用負担する仕組み)はありません。

なお、軽度の知的障害者や精神障害者が主な利用者と想定される「就労定着支援」という制度も始まります。こちらは(就労支援A・B型などではなく)一般の企業に就職した障害者をスタッフが巡回して支援する制度です。


解説
(前号の詳細解説もお読み下さい)
重度訪問介護を普段使っている障害者が、病気や怪我などで入院した時に、重度訪問介護ヘルパーを病院内(病室等)で使えるようになります。自宅と同じように支給量の範囲内で使えます。毎日24時間の重度訪問介護利用者なら、病院でも毎日24時間使えます。いつものヘルパーでいつものようにサービスを受けられます。(法律で「居宅において」の部分を「居宅及び厚労省の定める場所(病院内のこと)」に改正したため、入院時の病院も自宅と同等の扱いになります)。
入院前から自宅で重度訪問介護を利用している障害者が対象です。

2018年4月の制度開始時には区分6限定でスタート予定です。区分4・5が対象に入らなかった理由ですが、区分4・5の対象者は重度訪問利用者には少ないため、予算の問題ではないと思われます。例えば、医療とのすみ分けを考えると、病院の人員は「スタッフ7.5対患者1」ですので、平均すると患者1人あたり24時間中3~4hの人員がいることになります。すると1日4h以上介護が必要な重度障害者は入院するとサービス水準が下がってしまう理屈になります。こういったことを加味して、重度訪問介護の長時間利用者(16時間~24時間などの利用者はその殆どが区分6)をまずは対象にしたのではないでしょうか。ただ、制度開始後に区分6の利用者が各地で入院中利用し、その状況を見て、制度開始から3年後の報酬改定時などに対象者の検討を行い、区分4・5が入る可能性はあると思われます。


解説
(これも前号の解説も参照ください)
65歳に達する障害者(もともと障害ヘルパーなどを使っていた障害者)が介護保険対象になると介護保険のヘルパー利用が優先になるため、1割負担が発生します。この1割負担分を、障害者施策で負担する仕組みが2018年4月から始まります。対象は低所得者(詳細な範囲は未定)のみです。現状すでにある高額福祉費の償還払い制度(2ヶ月遅れでお金が帰ってくる)方式で対応する予定でしたが、国会の附帯決議でこの方式を再検討するよう言われています。ただ、システム改修などが必要で、この対応は難しいかもしれません。

また、原案では5年以上障害ヘルパー等(日中活動(生活介護)・居宅介護・重度訪問介護(同行援護や行動援護など外出介護の個別給付のみ利用者は介護保険の横だしサービスなので含まれない)。)を利用している一定の障害程度区分の障害者のみ(つまり60歳~64歳の5年間など障害ヘルパー等を利用した障害者のみ)が対象になるという案でしたが、この「5年」の期間や障害程度区分の範囲は再検討になると思われます。

また、障害の事業所(日中活動・居宅介護・重度訪問介護)が介護保険の基準該当を簡単に取れる仕組みも開始されます。

現状の案では障害の入所施設に入っている障害者が60歳や65歳以降に地域移行して、介護保険+重度訪問介護などを利用しても、この自己負担償還制度を使えないという問題があります。また、40歳から介護保険に入るALSやリウマチ等の特定疾患の方は対象外となっています。これらは今後の制度改正で対応するように運動が必要です。


解説
お試し利用や障害児などに限定して、補装具の貸与が始まります。ただし、貸与は限定的な導入であって、基本原則は給付という方法に変わりはありません。

社保審でもかなりこの点が議論されました。というのも、65歳で介護保険対象になった重度障害者が、全国各地で困っているからです。64歳まで体にあった車いすを補装具で受けていたのに、65歳を超えると介護保険のレンタルを使うように市町村に強制されてしまい、体に合わないレンタル車いすの使用を余儀なくされた事例が数多くあります。そのため、外出もままならなくなった事例もあります。国の通知等ではオーダーメードが必要な重度障害者の場合は介護保険対象者でも補装具が使えることになっていますが、一部市町村ではその通りの運用がされていません。

このため、今回の制度改正では、成長の早い障害児や進行の早い障害者、仮合わせなどの場合に限定し、例えば歩行器や、座位保持椅子などが導入例としてあがっています。