全国介護保障協議会では、制度の解説・情報等をHPに掲載しています。
当会HPより2016年1~7月の情報を転載致します。
入院時コミュニケーション(意思疎通)支援の通知が改正
筋ジス・頚損など言語障害のない場合も正式に対象に
【対象者を「聴覚、言語機能、音声機能、視覚、失語、知的、発達、高次脳機能、重度の身体などの障害や難病のため、意思疎通を図ることに支障がある障害者等」と明確化】
入院コミュニケーション支援事業(ヘルパーが一時入院中に病室で支援を行う)は全国各地の障害者団体の交渉で始まった制度です。これは、自立支援法とともに始まった地域生活支援事業(障害福祉の包括補助金で人口比に応じて補助金の上限はあるが、制度内容は市町村が自由に決定できる制度)の中のメニューで、意思疎通支援事業(コミュニケーション支援から2013年に名称変更)の中の1つのメニューという位置づけです。
地域生活支援事業の中の意思疎通支援事業は9割の自治体が実施していますが、手話通訳や点字などの事業の歴史が古く、入院時にヘルパーが個別の支援を実施できる市町村は、まだ全国の市町村の6割です。
現在、入院時に(ALSなどで重度訪問介護毎日24時間利用者なら)毎日24時間の入院コミュニケーション支援が利用できる市もあれば、1日1時間ほどしか使えない市町村もあります。
地域生活支援事業内の制度は、市町村が自由に制度設計できる制度のため、当初(2006年頃~)は、市や県と交渉した障害者団体によって、自治体を通じて国に国庫補助を使えることの確認がされ、入院コミュニケーション支援事業が各地で徐々に作られていきました。2011年に佐賀県がALS患者の一時入院時のヘルパー利用を特区制度で認めて欲しいと国に要望しました。この時に厚労省は「そういう制度はすでにあります」と回答し、入院時コミュニケーション支援をALS患者向けに推進するようにという通知を出しました(地域生活支援事業は障害施策の他に老人福祉分野にもあり、そちらで実施も可能なため、老健局と保険局が通知を出した)。
今回、このALSむけ通知を、意思疎通が必要な全障害向けに改正して、障害保健福祉部と保健局で新通知が出されました。新通知では、対象者を「聴覚、言語機能、音声機能、視覚、失語、知的、発達、高次脳機能、重度の身体などの障害や難病のため、意思疎通を図ることに支障がある障害者等」と明確化しています。
厚労省では、「普段はコミュケーション支援が不要の障害者でも、入院時に疲れてそれができない人も含む」と説明しています。普段は言語障害がない頚損や筋ジスなどでも入院時に対象になると明確化されていますので、市町村との話し合いの際にこの情報を障害者から市町村職員にお伝え下さい(市町村職員から厚労省に確認の電話・メールをしてもらうことが必要です)。
障企発0628第 1 号 各都道府県障害保健福祉主管部(局)長 殿 意思疎通を図ることに支障がある障害者等の入院中における 地域生活支援事業の円滑な運用にあたり、平素よりご尽力を賜り感謝申し上げます。 また、利用範囲については、入院中における利用も可能となっているところですが、改めて本通知により、入院中においても、入院先医療機関と調整の上で、意思疎通支援事業の利用が可能である旨をお知らせいたしますので、各都道府県におかれては、御了知の上、管内市町村にその周知徹底を図られますよう、お願い申し上げます。 なお、入院先医療機関との調整方法などについては、別添の「特別なコミュニケーション支援が必要な障害者の入院における支援について」(平成28年6月28日保医発 0628 第2号)をご参照ください。 ※ 本通知において、「意思疎通支援事業」とは、市町村必須事業の「意思疎通支援事業」及び都道府県必須事業の「専門性の高い意思疎通支援を行う者の派遣事業」の両方を指すものとする。 (参考)地域生活支援事業実施要綱(抜粋) ○意思疎通支援事業(市町村事業) ○専門性の高い意思疎通支援を行う者の派遣事業(都道府県事業) |
保医発 0628 第2号 地 方 厚 生 ( 支 ) 局 医 療 課 長 特別なコミュニケーション支援が必要な障害者の入院における支援について 保険医療機関における看護は、当該保険医療機関の看護要員によって行われるものであり、患者の負担による付添看護が行われてはならないものであるが(「基本診療料等の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(平成 28 年3月4日付け保医発 0304 第1号厚生労働省保険局医療課長通知))、看護にあたり特別なコミュニケーション技術が必要な重度の ALS患者の入院においては、当該重度のALS患者の負担により、コミュニケーションに熟知している支援者が付き添うことは差し支えないとしてきたところである。 今般、聴覚、言語機能、音声機能、視覚等の障害のため、看護にあたり特別なコミュニケーション技術が必要な障害者の入院におけるコミュニケーションの支援について、下記のとおりとしたので、その取扱いに遺漏のないよう貴管下の保険医療機関、審査支払機関等に対し周知徹底を図られたい。 なお、本通知の施行に伴い、「重度の ALS 患者の入院におけるコミュニケーションに係る支援について」(平成 23 年7月1日付け保医発 0701 第1号厚生労働省保険局医療課長通知)は廃止する。 記 1.看護に当たり、コミュニケーションに特別な技術が必要な障害を有する患者の入院において、入院前から支援を行っている等、当該患者へのコミュニケーション支援に熟知している支援者(以下「支援者」という。)が、当該患者の負担により、その入院中に付き添うことは差し支えない。 2.1による支援は、保険医療機関の職員が、当該入院中の患者とのコミュニケーションの技術を習得するまでの間において行われるものであること。 3.1により支援が行われる場合においては、支援者は当該患者のコミュニケーション支援のみを行うものであること。また、コミュニケーション支援の一環として、例えば、適切な体位交換の方法を看護職員に伝えるため、支援者が看護職員と一緒に直接支援を行うことも想定されるが、支援者の直接支援が常態化することなどにより、当該保険医療機関の看護要員による看護を代替し、又は看護要員の看護力を補充するようなことがあってはならないこと。 4.保険医療機関と支援者は、1による支援が行われる場合に、当該入院に係る治療や療養生活の方針に沿った支援が実施できるよう、当該入院に係る治療や療養生活の方針等の情報を共有するなどして互いに十分に連携すること。 5.保険医療機関は、1により支援が行われる場合であっても、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和 32 年厚生省令第 15 号)第 11 条の2に基づき適切に、当該保険医療機関の看護要員により看護を行うものであり、支援者の付添いを入院の要件としたり、支援者に当該保険医療機関の看護の代替となるような行為を求めてはならないこと。 6.保険医療機関は、1により支援を行う場合には、別添の確認書により、患者又はその家族及び支援者に対し、当該支援者が行う支援について確認を行い、当該確認書を保存しておくこと。 以上 |
(解説続き)
ただ、この通知(障害部と保健局の2箇所から通知が出ている)のうち保健局の通知はALS向けに5年前に出た時から、細かいことまで書きすぎているので、かえって制度が柔軟に運用されにくくなる問題があり、交渉に使うには少し注意が必要です。(「支援は、保険医療機関の職員が、当該入院中の患者とのコミュニケーションの技術を習得するまでの間において行われるものであること」という記述もあります)。
なお今回の通知では、5年前のALSむけ通知との変更点があり、体位交換をヘルパーと病院職員がいっしょにやりながら、介護方法を伝達することも可能とされています。(「適切な体位交換の方法を看護職員に伝えるため、支援者が看護職員と一緒に直接支援を行うことも想定」)
まだコミュニケーション支援事業で入院中介護を受けられない市町村の障害者や団体の皆様は、ぜひ事業実施の要望書を市に出してください。過疎地の小規模町村などでも、ALS等の重度障害者が町村に1回要望しただけで制度化されていっています。
なお、重度訪問介護が2年後に入院時に使えるようになると、この制度は重度訪問介護利用者の区分6「以外」の障害者が使う制度になります。視覚・聴覚・知的・精神・肢体(居宅介護利用者・重度訪問区分4・5)などはこの入院コミュニケーション(意思疎通)支援事業で入院時の支援を行う事になります。
参考 ALS向けの同様の通知は平成23年に出ています。(関東信越厚生局HPより)
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/gyomu/gyomu/hoken_kikan/tsuchi/documents/h23_0701.pdf
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