重度訪問介護等の1日を超える外出が全国で完全自由化。泊りがけの外出を全都道府県の全市町村が禁止できなくなりました。

2018年4月1日から

障害者団体での合同の交渉により、重度訪問介護等の外出の報酬告示の記述部分が変更され、原則として1日の範囲の外出に限定していた文書が完全削除されました。

これで、2泊でも3泊でも外出が完全に自由になります(全都道府県の全市町村で適用)。月の支給量の範囲であれば自由に旅行にも行くことができます。

告示で書かれていることは、法律と同じ扱いのため、市町村にそれを超えて禁止する権限はありません。今まで1泊以上の外出を禁止していた自治体でも、今後は禁止できません。従来は一部の政令指定都市などが一律に1泊以上の外出を認めていませんでした。

厚労省は数年前、社会通念上問題のない1泊以上の外出は積極的に認めるように事務連絡Q&Aを出していましたが、この事務連絡を無視して一律に禁止をしている大規模自治体があり、昨年12月国会において、複数の障害者団体で厚労省と交渉が行われ、改正の方針が決定されました。

(厚労省)平成 30 年度障害福祉サービス等報酬改定の概要

25p

外出時における支援の見直し

障害福祉サービスは、個々の障害者等のニーズ等を勘案して支給決定を行うものであり、1日を超える用務における支援の要否も含めて、市町村が支給決定を行うことから、外出時の支援を「原則として1日の範囲内で業務を終えるものに限る。」とする規定を廃止する(同行援護及び 行動援護についても同様)。

従来の重度訪問介護の告示

注1 次の(1 )から( 3)までのいずれにも該当する利用者に対して、重度訪問介護(居宅における入浴、排せつ又は食事の介護等及び外出(通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除き、原則として1日の範囲内で用務を終えるものに限る。2及び第3において同じ。)時における移動中の介護を総合的に行うものをいう。以下同じ。)

(以下略)

上記の  「原則として1日の範囲内で用務を終えるものに限る」  が削除されました。

これに伴い、外出のQ&A(1日を超える外出に関するもの)は廃止になりました。

詳しい解説

東京都など、措置制度時代に全身性障害者介護人派遣サービスが実施されていた全国200箇所程度の自治体のうち、ほとんどでは、従来から「宿泊を伴う外出」や「通年かつ長期の外出」も禁止していません。東京都では、障害者団体での障害者の勤務中や通勤中の介護なども認めていました。

これは、従来の制度である全身性障害者介護人派遣サービスで、月の支給量の範囲であれば自由に障害者が利用方法を決められていたため、2003年からの支援費制度や2006年からの自立支援法に変っても、利用者の不利益にならないように、制度運用を変えずに来たためです。

重度訪問介護や同行援護などの告示の「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除き、原則として1日の範囲内で用務を終えるものに限る。」の規定は、措置制度の初期に視覚障害者向けのガイドヘルパー制度が始まった時に作られた規制でした。

当時はガイドヘルプ予算が少なく、電話一本で利用できる制度だったために、

「針あんまなどの職場に行くのは決まったルートであるため白杖だよりで通勤してほしい」

「1年中(通年かつ長期)の通学や通所などは予算不足なので対象外(一時的な通学通所は対象)」

「旅行も予算不足でご遠慮いただきたい」

……という意味でした。

しかし、この規制がその後、肢体不自由の全身性障害者へのガイドヘルパーが始まったときにもコピペで要綱に記載され、2003年の支援費制度開始時に移動介護の告示に(特に再検討もされず)コピペされてしまいました。

当時はすでに1ヶ月あたりの支給決定で上限規制がある制度でしたから、電話一本で自由に使える制度ではなく、予算の理由は消滅しているのですが、過去の経緯をわからない行政職員によって従来の要綱の文言をそのまま掲載されました。支援費制度開始時には制度利用無料化で予算不足がおきていたので、従来の規制を撤廃することは難しかったという事情もあったかもしれません。

 

支援費制度に変ってから、移動介護は重度訪問介護に吸収されました。しかし、このときも予算不足で、同じ規制がコピペで告示に盛り込まれました。しかしながら、1ヶ月あたりの上限を支給決定している現在の仕組みでは、予算不足を理由にこういった外出の規制を残すことは、理論的な説明ができません。

 

重度訪問介護は、「家の中でも外でも同じように介護が必要な重度の全身性障害者」を想定した制度であるから、家の中でも外でも自由に使える制度として設計されています。支給決定も、原則として、家の中でずっと暮らす前提で1ヶ月に必要な時間数が決定されています(少々の社会参加の時間も加味されて決定)。

 

障害者団体側は、この支給決定のための勘案事項は変えずに、支給決定された時間数の範囲で、通勤や通年長期の外出に使えるよう、規制を撤廃するように求めています。

 

東京都他で1980年台から混乱なくこの仕組みで全身性障害者介護人派遣サービスが実施されていましたので、難しいことではありません。