全国介護保障協議会では、制度の解説・情報等をHPに掲載しています。当会HPより2015年7~12月の情報を転載致します。

入院中に重度訪問介護が利用可能に 厚労省制度改正へ

全国の障害者団体のロビー活動で、障害者総合支援法の附則や附帯決議に3年目の法改正議論
(常時介護を要する者、外出の支援、65歳で介護保険対象になる者の問題など)が盛り込まれ、今年その改正議論が行われました。厚労省は制度改正メニューを決め、社会保障審議会(社保審)障害部会を集中して開き、各種団体や与党・財務省と相談し、現状で改正可能なラインを確定し、このたび、社保審の最終まとめを行いました(詳しい経過や資料はHPに掲載)。
この中で、最重度の全身性障害者等にとって、命に関わる最も重大な事項であった、入院中の重度訪問介護の利用が、解禁される事になりました。この改正では、必要予算はほとんど増えません。通常、様々な文書発出(保健局からも診療報酬改正通知にあわせ発出)などの改正準備があるため、2016年4月開始は無理ですので、早くて2017年4月からとなるでしょう。
現状では、24時間介護の必要な重度の全身性障害者が肺炎等になると、入院すると重度訪問介護が使えずにヘルパーが付けられないので、そのままでは、体にあった体位も取れず、睡眠も取れずに体力がどんどん落ちて、病気が悪化し、死んでしまいます。入院することが危険で、入院できないという問題があります。このため、治療を受けられずに、自宅のベッドで往診等で出来る範囲の簡単な治療のみを受けて肺炎を直すといった重度障害者もいます。重度障害者は入院医療を受ける権利もない状態です。また、筋ジス等の場合は気胸や心臓疾患などで入院が必要な場合は自宅で投薬等で病気を治すことは不可能なため、入院するしかありません。現状では、重度訪問介護のヘルパーが無報酬で病室に24時間いつものローテーションで入り、在宅と同じ勤務を続けたり、障害者団体がヘルパーの費用を負担したりして同じ勤務体制をできるように支援を行ったりというのが現状です。毎月100万円以上がかかりますが、慣れたヘルパーがいないと、障害者が死んでしまうので、カンパ活動をしてでも仲間を支えています。このような大変な困難から、やっと開放される事になりました。1980年台から運動を続け、30年以上かかり、やっと国の制度が変わりました。
今回の改正には、多くの障害者や障害者団体が、政治家へのロビー活動や、自治体への要望をし、それらの動きを受け、多くの自治体や議員も国に要望し、その他、様々な運が重なり改正しやすい状況が生まれ、厚労省が障害者団体の要望に応え、改正が実現しました。
また、重度訪問介護は単価が低いため、都市部から過疎地まで、サービス利用を希望しても、ほとんどサービス提供可能な事業所がない状態です。毎日24時間や16時間などの長時間の介護が必要な障害者がその時間数の重度訪問介護のサービスを受けるには、専用の常勤ヘルパーを事業所に雇ってもらうなど、事業所に特別な体制をくんでもらわねばなりません。その場合、事業所にとっては、重度の利用者はよく入院するため、そうなると一切の収入がなくなるため、経済的なリスクが高すぎて常勤ヘルパーを雇用することが困難でした。こういったことが、今回の改正でかなり解消します。(利用者が亡くなる時のリスク等は残る)。

今回の制度改正は、重度訪問介護を日ごろ利用している重度障害者が、その障害者の1人1人ごとの特殊な介護になれたヘルパーが、入院中の病室に入院前と同じ介護ローテーションで入り、いつもと同じ見守り支援やコミュニケーションの支援を出来るようにという考え方です。診療報酬との関係で、病院の看護職員が行うこととされている介護はできません。様々な介護等の辞退に備えて見守りをし、介護方法が特殊な障害者の介護の方法(例えば、体位交換で、決まった形にミリ単位で体や手足の位置決めをしなければいけない全身性障害者も多いです)を看護職員に伝える等をし、コミュニケーションの支援をします。なお、元から入院している障害者は対象になりません(慣れた重度訪問ヘルパーがそもそもいないから)。在宅で重度訪問介護を使っていて病気で一時的に入院する場合を想定しています。居宅介護利用者は日頃見守りやコミュニケーション支援を含んだ長時間介護をする慣れているヘルパーがいないので、対象外です。
東京・兵庫など一部自治体での単独事業の入院中の重度訪問介護利用の先進事例からすると、重度訪問介護の支給量はそのままで、その支給量の範囲で、入院しても一切の市町村での支給決定事務の変更等の手続き無しで、入院中に利用できると想定されます。
診療報酬の通知には付き添い廃止の原則が書かれているため、通知の詳細に「知的障害を有する患者等は除く」(この「等」には全身性障害者も含まれるというのが厚労省見解)という記載があることを病院に説明しないと、病院は付き添いを認めてくれません。なお、入院中にヘルパーを24時間つけるには、ほとんどの病院では夜は他の患者に迷惑がかかる等の理由で、個室に入ることを条件として求められています。このため、肺炎・イレウス等で救急車で搬送された場合は、夜などの場合はどこの病院に行くかわからないため、4人部屋しか空きがない病院等に入ると、他の患者の迷惑だから長期には夜の介助はつけるのはお断りと病院から言われ、病状が安定したら救急車で個室のある病院に転院することなどもあります。支援団体がこうした病院との交渉のノウハウを持たないと、制度が対象になっても使えないということになります。病院の診療報酬の通知については下記の2009年の特集記事の再掲載を参考にしてください。
(2009年の特集より抜粋掲載)
法改正なしでできる、入院時の介護制度
~ヘルパー制度を最重度障害者の入院中にも使えるように~
入院中の介護制度の実現の運動の歴史
・80年代 東京都の単独制度の全身性障害者介護人派遣事業(97年よりヘルパー制度の国庫補助事業)で
は、入院中も付き添いOKだった(市町村が認める最重度者のみ)(障害者団体の説明・交渉によって必要性を都が認めていた)
・90年代 東京以外の何箇所かでも市単独制度として入院の介護制度が始まる
・90年代半ばに出た、完全看護開始時の通知(厚生省の病院を管轄する局の通知)では 「(付添婦は廃止するが)家族の経済的負担にならない方法ならば、児童や知的障害者「等」には付き添いをつけていい」という例外措置あり。 ・・・・ここでいう知的障害者等の「等」には「入院時も介護者が不可欠な全身性障害者も当然含まれる」と厚生省の当時の担当者が当会との交渉の場で回答。
・これを受けて、ヘルパー制度で入院中も病室に入れるように障害福祉課と交渉。

結果、「ヘルパー制度で病室で介護しても良いが、国庫補助はつかない」という回答になる(97年ごろ)
・障害者自立支援法開始
それまでの国庫補助事業であったヘルパー制度が、国庫負担になり、自治体の裁量で制度を運用するのは法的にグレーに。
・また、自立支援法開始で包括補助金の地域生活支援事業で市町村が障害福祉事業なら何でも行ってよくなり、入院介護制度を地域生活支援事業の中のコミュニケーション支援の中で実施する市町村が数箇所出てきた。
(厚生労働省の障害部自立支援室が「コミュニケーション支援でやるのなら看護師の仕事と重複しないからOKです」と自治体に回答したため) しかし、コミュニケーション支援名目では言語障害の障害者しか対象にならない。1日数時間しか対象にならないなどの問題。
・「コミュニケーション支援ならよい」と回答した根拠は、診療報酬の通知に「家族の経済的負担にならない方法ならば、児童や知的障害者「等」には付き添いをつけていい」という記述とともに「ただし、看護師の仕事を代替するものであってはならない」との記述があり、さらに同じ通知に看護師の仕事として「清拭、食事、排泄等の世話等療養上の世話」などが列挙されているため。
・やはりヘルパー制度本体を(必要な人には)入院中も制度対象にするのが筋。
・つまり、以下のようにすれば解決する(ヘルパー制度で入院してもヘルパーが病室についていける)
1 診療報酬の通知の下に事務連絡を出し、「なれたヘルパーの介護が不可欠な最重度の全身性障害者は診療報酬で想定していないので、市町村が認めるような最重度の場合は、障害ホームヘルパー制度のヘルパーが病室で障害者に付き添って介護等を行ってもよい」と書く。
2 障害福祉課からも事務連絡を出し、「市町村が特に認める最重度の障害者の場合は、重度訪問介護などで病院の中で介護していい」と書く。
なお、各自治体で行われている入院時の介護制は、地域ですんでいてヘルパーを長時間使っている障害者が肺炎での入院や呼吸器をつけるための検査入院時に使えるものです。施設の代わりに病院に社会的入院をしている障害者を対象としたものではありません。 肺炎などの場合は長くて数ヶ月の入院になりますが、基本的には短期入院を対象にして、市町村が認める場合は延長OKということになります。
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完全看護の通知とのからみについて
現行通知 http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/dl/tp0305-1h.pdf#page=18(通知の対象ページへのリンク)
(この通知の構成は以下のとおりです )
平成20年3月5日保医発第0305002号
「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」
∟別添2 「入院基本料等の施設基準等」
∟第2 「病院の入院基本料等に関する施設基準」
∟4 「入院患者の数及び看護要員の数等については下記のとおりとする。」
∟(6) 「看護の実施は、次の点に留意する。」
∟ア
∟イ
ア 看護は、当該保険医療機関の看護要員のみによって行われるものであり、当該保険医療 機関において患者の負担による付添看護が行われてはならない。ただし、患者の病状により、又は治療に対する理解が困難な小児患者又は知的障害を有する患者等の場合は、医師 の許可を得て家族等患者の負担によらない者が付き添うことは差し支えない。なお、患者の負担によらない家族等による付添いであっても、それらが当該保険医療機関の看護要員による看護を代替し、又は当該保険医療機関の看護要員の看護力を補充するようなことがあってはならない

イ ①病状の観察、②病状の報告、③身体の清拭、食事、排泄等の世話等療養上の世話、④ 診察の介補、⑤与薬・注射・包帯交換等の治療の介助及び処置、⑥検温、血圧測定、検査 検体の採取・測定、検査の介助、⑦患者、家族に対する療養上の指導等患者の病状に直接 影響のある看護は、看護師又は看護師の指示を受けた准看護師が行うものである。 看護補助者は、看護師長及び看護職員の指導の下に、原則として療養生活上の世話
(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)のほか、病室内の環境整備、ベッドメーキング、看護用 品及び消耗品の整理整頓等の業務を行うこととする。
(通知の解説は以上)

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